0125:3-4-1:恐怖を乗り越える『メカニズム』の知識

3-4【恐怖を乗り越える『メカニズム』の知識】


「メカニズム」を知って恐怖を乗り越えるために

ところで、この本のテーマは「人生が辛いのはなぜか?」です。ですので、これまでの「メカニズム」の話を「人生の辛さ」の解消に役立てることができなければ、単なる机上の空論です。
 ですから、ここで先程の例である「恐怖」のメカニズムをもとに、それをどうやって乗り越え、「人生の辛さ」の解消に活かして行けばいのか、という話をしていきましょう。皆さんが聞きたいのは、どちらかというとそういう話ですよね?

 さて、恐怖心とは、とても厄介な感情です。一度ココロが恐怖に支配されてしまうと、人によってはなかなかそこから抜け出せず、寝ても覚めても、なにもかもを恐れてしまい、結果として何もできなくなってしまう・・・そんな辛い人生を歩んでしまうこともあるでしょう。
 ですが、実は恐怖心というものは、モトの仕組みを知っていると、割と乗り越えやすいものだったりします


恐怖を克服するのは「あるパーツ」の力

恐怖を乗り越えるために必要なのは、まずは

 ・僕たちは三つのパーツでできている


という知識です。カラダ・アタマ・ココロの三つでしたね。アタマとココロの違いについては、第一章で詳しく説明した通りです。
 そして次に、先程説明した

 ・恐怖が起こるまでのメカニズム


です。僕たちが「恐怖」を感じるまでには先の三つのパーツが協業しているのですが、その順番は

・カラダが周囲の情報を集める
  ↓
・アタマが「それが何であるか」を判断する
  ↓
・ココロで好き嫌いゲージが動く

というものでした。

 この三つのパーツのうちで、人生を辛くないものにするのに一番有用なのは、どれだと思いますか? 一つずつ考えてみましょう。

 まず、カラダ。カラダは周囲の情報を常に集め続けています。ですので、目をつぶったり耳を塞いだりはできても、肌の感覚をゼロにすることってできませんよね? だから、カラダを自分の意思でコントロールするのには、限界があると言えます。

 そして、ココロ。ココロは勝手に「感じて」しまうものです。ほら、アタマとココロの違いを説明したときのことを思い出してください。
 美しい音楽に感動して涙する時って、僕たちは「ここで感動するぞ、涙を出そう」と「考えて」なんかいませんよね? これは、ココロはアタマの働き「それがどういうものであるか」に自動的に反応して、好き嫌いゲージを動かして感情を生成するパーツだからです。
 というわけで、ココロも僕らが直接「コントロール」するのには、限界があります。

 では・・・僕らが普段一生懸命に動かして生きている「アタマ」なら、どうでしょうか?

 実は、三つのパーツのうちで一番「自分でコントロールしやすい」ものは、アタマなんです
 だから、「辛い人生を何とかしたい」と思っているなら、コントロールしやすい「アタマ」を上手に使うことが近道だということなんですね。


「アタマ」で恐怖を乗り越えよう

先程の「メカニズム」を思い出してください。恐怖に限らず、ココロが何らかの感情に満たされる時、必ずこの「メカニズム」が働きます。

 カラダ、アタマ、ココロのプロセス(順序)です。

 ただ、人間はアタマがとても良く発達している生き物なので、アタマで考えたことだけ(想像や妄想など)でココロが感情を返してくることがあります。その場合でも「アタマ」→「ココロ」の順番で感情が出てくるという点は同じです。

 このプロセスで、どこかをコントロールしようと思ったら、一番やり易いのが「アタマ」の部分というわけです。

 ではどうして、アタマはコントロールしやすいのでしょうか?


人類が「火を恐れない」のはなぜか

アタマというのは、繰り返している通り「考える」パーツです。
 生き物がアタマで考える時というのは、これまた次のようなプロセスを経ています。

・記憶(知識や経験)
  ↓
・思考
  ↓
・判断

 ココロは、アタマが出したこの「判断」をもとに、好き嫌いゲージを動かして感情を発生させているんです。

 恐怖心も、例外ではありません。

 簡単な例を挙げましょう。皆さんご存じの「火」についての話です。

 大抵の動物は、火を恐れます。なぜなら、それがどういうものかよく知らないからです。光と熱を放つ、謎の現象。近づくと危ないかも!! そういう判断が「恐怖」をココロに生み出すわけです。

 ですが、人間は(恐れるココロは多少あるとして)、火を日常的に利用して生活しています。毎日のお料理、石油ストーブ、そしてお風呂を沸かすのにも、火は現代の生活に欠かせないものです。
 どうして、人間は火を恐れないのでしょうか?

 それは「知識」があるからです。

 人類は早い段階から、火を利用して生活をしてきました。日本では、縄文時代にはすでに火を利用して調理をしていたらしいですし、おそらくそのずっと前から火は人類に利用されていたでしょう。
 人類はアタマが発達しているので、はじめはよく分からなかった「光る熱い何か」を、生活に利用することができると気づいたんですね。そして、その「知識」をもとに、生活を豊かにしてきました。
 その後、科学の発展と共に、火というものが「炭素と酸素が結合するときの発光現象」であることを突き止めました。火が起こるメカニズムを「理論」的に解明できたんです。
 それまでの火についての「知識」にこういった「理論」が加わることで、その知識はより堅固なものになりました。
 もはや人類は、火をほぼ完全にコントロールしながら暮らしています。スイッチひとつで火を起こし、スイッチひとつで消すことができます。


「火を恐れない」事実が示すもの

もし僕たちが「火が怖くて仕方ない」生き物だったら、たぶん毎日お料理するたびに、好き嫌いゲージがグイッと下がって「恐怖」になってしまうでしょう。
 でも、僕たちは「アタマ」を使って生活しているから、火を恐れなくて済んでいるんです。

 これはとても重要なことです。なぜなら僕たちは

 「アタマ」で恐怖を克服できる


 ということを、示唆しているからです。

(続く)

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