3-4-2【『ABC理論』とモトの合わせ技】
メカニズムの中に「プロセス」がある
この本では何回か「感情というのはココロから勝手に湧き起こってくるものだ」と書いたと思いますが、実はココロから感情が湧いてくる前には必ず「アタマ」
が動いています。
周囲にあるものや状況、周囲の人の様子や言葉、そういったものをもとに、僕たちのココロは感情を発生させるのですが、ココロが感情を発生させるメカニズムには、前項で述べた通り
・カラダ(が得た情報)
↓
・アタマ(が判断した認識)
↓
・ココロ(が動かした好き嫌いゲージ)
というプロセス(順序・手順)があるわけです。
ですから、周囲の状況がどうかということより、それを
アタマがどうとらえているか
が、ココロにとって重要なわけです。恐怖を「アタマ」で乗り越える、というときには、この「アタマ」のプロセスを利用します。
恐怖のメカニズムと『ABC理論』
ここでひとつ、ご紹介したい心理学の手法があります。『ABC理論』と呼ばれるものです。『ABC理論』とは認知行動療法の一種で、ココロから勝手に湧いてくる「ように見える」様々な感情に振り回されるのではなく、アタマで論理的に行動を分析・コントロールする手法の一つです。
まず、ABCとは次の三つを指します。
・A「出来事」(Activating event)
・B「信念(考え方の基礎のようなもの)」(Belief)
・C「結果」(Consequence)
簡単な例として「犬を怖がる人」を見てみましょう(ゴキブリでもいいんですけど・・・ちょっと克服が難しいかもしれないですので・・・)。
犬が怖い人というのは、犬を見たら怖がります。これをABC理論のAとCに当てはめると、次のようになります。
・A「出来事」=『犬を見た』
↓
・C「結果」=『犬を怖がる』
僕たちは普段の生活で、このように自分の感情や行動をとらえています。ですが、よく考えてみると、AとCの間に、Bである『信念(=考え方の基礎)』があることが分かります。つまり
・A「出来事」=『犬を見た』
↓
・B「信念」=『犬とは、襲ってくる怖い生き物だ』
↓
・C「結果」=『犬を怖がる』
という具合です。人によって犬が大好きだったり、怖い生き物だったりするのは、この
「Bの部分」が人によりけり
だからだ、というのがABC理論なのです。さらに、ABC理論ではこのB「信念」の部分を変えられれば、結果としてC「結果」を変えることができる、とされています。
この例で言えば、犬を怖がっている人も、Bの「信念」の部分である
『犬とは、襲ってくる怖い生き物だ』
という考え方を、何とかして
『犬は人間にやさしい生き物だ』
というふうに変えられたら、Cの「結果」である部分が
『犬は怖くない、むしろ可愛いから、怖がらない』
というふうに変わるのです。
「人生が辛い」というときにも、必ずアタマのどこかにこの『B』が隠れています。この『B』を変えてやらないと、いつまでも人生は辛いままです。
『ABC理論』とモトの合わせ技
では、モトの話に戻りましょう。この本では繰り返し「モトの流れを意識して、人生を辛くないものにする方法がある」と書いていますよね。その一つがこの『ABC理論』にモトの考え方を組み合わせたものなのです。
僕たちの感情が動くときというのは、必ずココロのモトの量が変化しています。なぜなら感情というものは、ココロが好き嫌いゲージの動き(=モトの量の変化)を検知して、自動的に発生させるものだからです。
ですから、ネガティブな感情がココロにあるときにも、先程書いた「メカニズム」である
・カラダ
↓
・アタマ
↓
・ココロ
という「プロセス」(情報の流れ)が、必ず発生しています。この「プロセス」に従って、ココロは最終的に感情を起こし、何かに注目してモトを消耗するわけですから、ネガティブな気持ちになっているときも、必ず何らかの
「アタマの動き」
を経ていると言えます。例のメカニズムでいうと
・カラダ(何らかの出来事や情報)
↓
・アタマ(それが自分にとって嫌なものだという判断)
↓
・ココロ(ネガティブな気持ち)
というプロセスを、意識していようといまいと、必ず経ていることになります。
だからこそ、変えられるのです。
アタマは自分で普段コントロールしているものです。ここが変えられれば、モトの流れをある程度までコントロールできるようになる、というのが、僕流の
「人生を変える方法」
なのです。
※僕らは何かを想像したり、思い出したりしただけでネガティブな気持ちになることもあります。こんな時は、プロセスのうちの最初の手順(ABC理論でいうAの部分)をすっ飛ばして、アタマだけでココロを動かしています。「思い出し笑い」なんかもこういう例に当てはまります。人間はよく考える生き物なので、こういうこともしばしば起こります。
「アノ昆虫」の『気持ち』を想像してみよう!
では、それらを利用して「怖さ」を克服するのには、どうすればいいのか。ではみんな大好きな(笑)、ゴキブリ君に再び登場していただきましょう。
ゴキブリが出てきたら怖いし、出てくるかと思っただけで暗いところなんかが怖い。こういう方はよくいらっしゃると思います。僕もそうです・・・。
実際に家に大きなやつなんかがカサカサッと出てきちゃうと、もう家にいるのが嫌になっちゃうレベルで嫌いだったりしますよね? 僕もです・・・
ですがね・・・よく「考えて」みたら、僕らのカラダはゴキブリのカラダよりずっと、ずっと大きいんですよね。それこそ何千倍もの体積があるわけです。
だから、いざ戦いになったら、もう確実に勝つわけですよ。一匹のゴキブリとの戦いに破れて亡くなった人なんて、一人もいません。
それに、多分ゴキブリだって怖いんですよ。自分の数千倍の大きさの生き物を目の前にして、すごく怖がってるんじゃないかと思うんです。ましてや、相手は自分の種族を目の敵にしているような巨大生物です。怖いに決まってます。
その証拠に、ゴキブリってものすごいスピードで逃げますもんね。もう全力ですよ。僕らにとっては「小さな虫けらが人生の一角に出現しただけの話」ですけど、彼らにとってみたら、僕たちとの出会いは「死ぬかもしれない瀬戸際」なんですからね。
それに、皆さんはゴキブリがこちらに気づいていないときの様子って、見たことありますか? よく見たら結構ひょうきんでユニークなんですよ。
全力疾走するときは、ゴキブリはカラダを伏せてすべての足で駆け抜けますけど、そうでないときはカラダを起こして、周囲をキョロキョロしながら餌や卵を産む場所を探すんです。なかなかオチャメです。
・・・とはいえ、なかなかゴキブリを「カワイイ! 大好き!」とはならないだろうなと思います・・・僕もそうですし。
ですが、僕は以前よりは「怖い」と感じなくなりました。
そう感じなくなったのはやはり「アタマ」で意識して
「ゴキブリは怖がらなくていい生き物だ」
と『考えて』いるからじゃないかと思います。何かを怖がるときというのは、僕たちのココロのモトの量が、何かに注目することによってグイッと減っているんでしたね。そして、好き嫌いゲージが「嫌い」に振り切っているんでした。
注目によってモトが流出するのは、逆説的ですが「怖がっているから」です。怖がると、相手にさらに注目してしまい、よけいにモトが減ります。
だからまず
「怖がるのを『アタマ』を使ってやめる」
と、モト流出を抑えることができます。
怖いものは、見つめると「消えてしまう」
ここで役に立つのが先程の「ABC理論」なんです。アタマを使って「B(信念)」に気づくと、僕たちは「B」に対する考えを「改める」チャンスを得られます。というよりはむしろ、僕たちはそうすることでしか「怖さを克服する」チャンスに恵まれません。
まず、「怖がっている自分」に気づいてください。
そして、怖がっているものが、どんな動きをしている、どういうものなのかを、カラダで冷静に観察して、そしてアタマで冷静に考えてみてください。
そうすると、その「怖がっていた対象」に、どう対処すればいいかが、だんだん分かってきます。
そしてアタマが「分かる」状態になると、自然とココロが発している「恐怖」の感情が薄まっていきます。モトの流出が緩やかになるからです。
こんな風に恐怖をしずめるために必要なのは、先程のABC理論と『モトの考え』を組み合わせた例のメカニズム
・カラダ(怖いものを見る、聞く、体験する)
↓
・アタマ(怖がっている自分に気づき、怖がるのをやめて対処を考える)
↓
・ココロ(怖がらない)
なんです。
「怖いものは、見つめると消えてしまう」なんて言われますが、こういうプロセスを経てようやく「消えてしまう」んです。
ゴキブリについては、僕は今でも若干、家にいきなり出現するとギョッとしてしまうんですけど、以前ほど「怖くて身がすくむ」ようにはならなくなりました。おかげさまで、冷静に駆除できるようになりました・・・ちょっとかわいそうだけど。
モトの知識と『ABC理論』で「恐怖」を乗り越えよう
さて、このように「モト」の知識がアタマの動かし方とココロのあり方に重要な役割を果たすことが、お分かりいただけたでしょうか?『モトがその時どう動いているか?』
その知識があるだけで、どんな人でもココロと感情のコントロールがずいぶん楽になるはずです。
さて、今まで「恐怖」について見てきましたが、ついでによくあるネガティブな気持ちのひとつ「怒り」についてもここで触れておきたいと思います。
(続く)
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