0130:4-3:恋の落とし穴

4-3【恋の落とし穴】


恋はなぜ終わるのか

一度恋人同士になったあと、そのままその関係がずっと続けばいいのですが・・・そうもいかないのが恋愛の難しいところです。

 先程も書いたとおり、恋愛にはよくある「落とし穴」があります。

 恋人との関係がギクシャクし始めて、今まで通りの「会っただけで幸せ」な感覚が薄らいでいき・・・いつしか二人はケンカばかり。
 そうこうしているうちに、出会った頃の情熱が嘘のように気持ちが冷めていき、そして悲しい別れの時が訪れる・・・こういう「よくある別れのパターン」のことです。

 このありふれた「恋愛の終わり」のモデルケースも、モトを通して観察すると、非常に明確に、それこそ興ざめするレベルで(笑)、二人の関係の変化を理解できるようになります。特に、恋愛というのは先程も書いたとおり

・カラダ
  ↓
・ココロ

という単純な命令系統で起こる気持ちなので、なおのことモトの流れが単純明快です。では、順を追ってくわしく見てみましょう。


カラダからの信号が途絶えるとき

まず、二人の「恋仲」が始まると、二人はモトをジャンジャン送り合うようになります。「恋愛アピール合戦」が始まるんでしたね。
 ココロというパーツは、モトが増えると「幸せを感じる」ようにできています。ですから、この恋愛アピール合戦というのはとても居心地がよく、安心でき、幸せな感じがするものなんです。経験ありますか?

 こちらも「好き!」という気持ちで、自分でモトを増やしていくし、相手からもどんどんモトが送られてくるわけです。幸せにならないはずがないですよね。単純に「モトが増えていく」んですから。

 ところが・・・ほら、この「モトの出どころ」って、どこでしたっけ? そう、「カラダ」なんですよね。恋愛はカラダからの信号によって始まり、継続する気持ちなんでした。
 だから、この「モトの増加」が起こり続けるのって、実はこの

「カラダからの信号」が続いている間だけ


なんです。ここが『恋愛の落とし穴』なんです。


百年の恋が一気に覚める『メカニズム』

お互いがお互いのカラダに魅力を感じ、一緒に過ごすだけでモトが増えていくような関係・・・「性欲」に基づいたモトの増加と幸せな感覚は、あくまで「カラダからの信号」、つまり本能的に性的な相手を求める気持ち(異性同性どちらもです)が続いている間だけです。この信号が途切れたとき、モトの供給は急にピタッと停止します

 「百年の恋が一気に冷める」瞬間って、味わったことありますか? あれです。あのとき「信号が途絶える」んですね。

 そうなるともう、こちらから「好き!」という気持ちがおこらなくなって、結果的にココロはモトの増産をやめてしまいます。
 モトが増えなくなるので、こちらは相手にモトを送るのをやめてしまいます。「恋愛アピール」が終了するのです。

 そうなるとどうなるか・・・実際のモデルケースに当てはめて説明したほうが分かりやすいと思いますので、アルファさんとベータさん(性別が特定されない名前をチョイスしています)の「恋愛アピール合戦の終わり」を見ながら解説していきます。


アルファとベータの「恋の終わり」の始まり

アルファとベータ、二人の人物。二人は恋人同士。すでにお付き合いを始めています。恋=性欲なので、素敵なカラダの関係もあります。そういう二人。

 ある日のこと。アルファの「カラダからの信号」が消えてしまいました。原因は本人にもよくわかりませんが、ベータの「嫌な部分」を見てしまったのかもしれませんね。
 鼻毛がいつも出ているとか、お金に汚いだとか、部屋を片付けてくれないとか、動物をいじめるとか、そういう些細なことかもしれません。

 ともかく「カラダからの信号」が途絶えてしまったため、アルファのココロは、相手に送るための「モトの増産」を急にストップしてしまいます。本人の意志とは関係なく、です。

 ほら、恋愛のときのココロの動きって

・カラダ(本能・性欲)
  ↓
・ココロ(恋の気持ち)

なんでしたね。本人の意志(アタマ)とは関係ない動作なんでした。だから、本人がどう思ってようが(たとえアタマでは「今の心地よい関係を続けたい・壊したくない」と考えていようが)、終わる時は急に終わるんです。

 そうすると・・・アルファは、ベータに毎日・毎時間・毎分行っていた「恋愛アピール」が、急に苦痛になります。送り出す「モトの量」が足りなくなるからです。

 結果的に、今まで普通に「ラブラブ」していたようなことが、できなくなっていきます。抱き合ったりイチャイチャしたりという、スキンシップがおっくうになってしまったり、相手のためになにかしてあげる・お金をつかうことがイヤになってきたり。


恋愛アピールの終了とモトの「送り損」

問題は、ベータです。ベータは恋愛アピールでモトを送り出すと同時に、アルファからのアピールでモトを「受け取る」側でもあります。

 あるとき急に、アルファからの「モトの供給」が途絶えるわけです。ココロはモトの量を常にはかっていますので(目には見えないし、自覚もありませんが)、この「モトの供給ストップ」にとても敏感に気づきます。ベータのココロも、なんかおかしいぞ? と感づきます。

 終わってしまった恋を振り返ったとき「そういえばあの時から、相手の態度がおかしかったよね」という瞬間が思い出されれることがありますけど、要はその時ココロは「あれ?」という違和感を感じていたということです。ココロは相手からの「モトの供給ストップ」に気づいていたのです。

 とはいえ、人間のアタマは急な変化に鈍感なので(『習慣』の機能を活用して生活しているからです)、ココロの「違和感」よりも、アタマの「いつもどおり」を優先しがちです。というわけで、ベータは今まで通り「恋愛アピール」をしようとします。ココロが生み出したモトを、いつも通りバンバン相手に送り込むのです。

 ところが・・・アルファの気持ちは「冷めて」います。ココロが自動的に「好き!」という気持ちになっていたのが、すでに終わっているわけです。カラダからの信号が途絶えているからでしたね。
 だから通常は、以前ほどベータにモトを送り返さなくなっています。恋愛アピールというのは、相当量のモトをジャンジャン送る現象でしたね。恋愛の気持ちなくして、こんなにモトを送り返せる人間はそうそういません。

 結果として、ベータには「送ったモトの量」より「返ってくるモトの量」が少なくなる、という現象が起こります。モトの「送り損」が発生してしまうのです。

 送り損が出だしたとしても、ベータはまだ自分のココロでモトを生み出していますので(「好き!」という気持ちがそうするのでしたね)、しばらくはベータの恋愛アピールが続きます。恋の気持ちを表現して(スキンシップをはかったり、相手のお世話をしたり、なにか買ってあげたりとか)、ありったけのモトを相手に送るわけです。

 よく考えたら、これらのことは「相手の注目を集めるために、こちらが注目している」行為です。「注目する」と「相手にモトが飛んでいく」んでしたね。
 恋愛アピール合戦では「相手からモトが返ってくる」という前提があるから、こちらから安心してモトを送り込めるんです。

 でも、冷めてしまったアルファからは、もう以前ほどのモトが返ってきません。アルファ側は、できるだけもらったモトを温存しようとするからです。
 具体的には、態度がよそよそしくなる、連絡をよこさなくなる、一緒に食事したり寝たりする回数が減る、そういったことが始まります。以前みたいに、ジャンジャンモトを送ることができなくなるわけです。ココロが生み出してないのだから。

 鈍感なベータのアタマも、いずれはこの変化に気づきます。すなわち

「自分のモトが送り損になっている」


ということに、です。


恋の終わりと「ネガティブな感情」の関係

注目すべきは、このときのベータが『相手の気持ち』(冷めている)に気づいているわけではない点です。
 ベータはあくまで「自分のココロのモトが以前みたいに増えないこと」に気づくだけなんです。

 「恋愛アピール合戦」の真っ最中は、アルファと一緒に過ごしているだけでココロのモトの量がどんどん増えて、好き嫌いゲージがずっと高い数値で安定していたのに、今はなんだか、一緒にいてもそんなに好き嫌いゲージが上がらないようになってきた、と気づくんです。

 そうすると、どうなるか。
 実は、ベータは「モトを減らしたときの行動」をとりがちになっていきます・・・実際に減らしてしまうので。

 モトが減るとどうなるんでしたっけ? 詳しくは「好き嫌いゲージ」について書いた第二章・第三章にあります。思い出してみてください。

 そう、「不安感」が増すんでしたね。好き嫌いゲージが下がるからです。そしてその「不安感」を埋めて、好き嫌いゲージを安定させるために、ココロは様々な感情を発生させて、相手からモトを取り戻そうとします。

 具体的には・・・
・以前みたいにかまってくれなくて「怒って」しまう
・相手にしてもらえなくて「さみしく」感じる
・急に会うのが「怖く」なる
・楽しかった過去を思い出すと「悲しく」なる
こういった「ネガティブな」感情が起こるようになります。

 特に厄介なのが、怒りです。
 怒りは相手を「攻撃」して、強制的に「注目させる」ことで、直接モトを取り戻そうとする手段です(だから「怒り」は防衛反応なんです)。
 この場合、ベータがアルファのそっけない態度に「怒り」を発生させる機会が増えていきます。最初のうちはガマンすることもあるのでしょうが、いつかは耐えられなくなって、ベータがアルファに直接怒りをぶつける日が来ます。

 ほかにも、さみしさが増すので、ひんぱんに連絡を取ろうとしたり、こっそりアルファの後をつけたりするかもしれません。今時ですと、SNSのレスを全部見たり、スマホをこっそり覗いてみたり・・・。

 こうなると、先に冷めてしまったアルファも、自分のモトを守るために、怒りで対抗するか、恐怖で逃げ出すかするようになります。アルファも「モトを減らさないように」ネガティブな行動をするようになるんです。

 こうなってしまうと、もう「恋愛」どころではありません。二人のココロはもう「恋の気持ち」(=カラダからの信号)で動いているわけではなくなってしまうんですね。ベータにはその気持ちが残っているかもしれないけれど、よほどのことがない限り、アルファは再び「恋」の状態にはなりません。

 こうして二人の関係は冷えていき、会うたびにケンカばかり・・・いつしか何かのきっかけがあったり、なんとなく連絡が途絶えたりして、アルファとベータの「恋愛の関係」は終わりを迎えることになります。


モトの流れを推測すると「恋愛」が分かる

いかがでしたか? 恋愛を含む人間関係はもっと複雑だったりしますけど、結局はこの単純化したモデルがベースになっているのではないかと思います。

 恋愛アピール合戦が続いているうちは、恋愛関係はとても気持ちのいいものです。スキンシップや性行為などの肉体的なものだけではなく、一緒に過ごすだけで、相手の魅力でココロが勝手にトキメキを覚えるものですよね。お互いがお互いにモトをどんどん分け与えてる上に、自分でも増やしているんですから。

 その関係がいつまでも続けばいいのですが、こんな風に恋の終わりは「本人の意志とは関係ない」、すなわち

アタマでコントロールできない


ものなのです。だって、カラダからの信号でココロが動いて起こる気持ちだから。

 でもね・・・ここまで読んだら、こんな疑問も湧くと思います。

「とても長く続いてるカップルはどうなってるの?」



愛し合い続けられるカップルもいるという事実

さて、ここでやっと「愛」の登場です。この章の最初に書いた「『恋』と『愛』の違い」の話ですよ(笑)。ここまでは「恋」の話でしたけど、ここから先はようやく「愛」の話になります。

 「愛」はこの本の重要なテーマでもあります。モトの考え方を利用すると、今まで漠然と語られるのみだったこのフワフワした

「愛」とはなにか


という疑問に、単純で明快かつ、誰にでもわかる「答え」が与えられます。次で詳しく見ていきましょう。

(続く)

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