0127:3-5:怒りを乗り越えるための「モト」の力

3-5【怒りを乗り越えるための「モト」の力】


「怒り」もやっかいな感情

ここまで見てきたように、「恐怖心」はアタマを上手に使うとコントロールできる可能性が高まります(無理な場合もあります。その場合は適切な医療機関にご相談ください)。
 同様に、「怒り」の気持ちもアタマでコントロールできることがよくあります。
 ここでは、その方法について「モト」の観点から見てみましょう。

「怒り」はココロの防衛反応だ

この本で何度か書いた通り、

「怒り」は防衛反応

です。すべての怒りが防衛反応です。なかなか理解しづらいかもしれませんが、何かについて怒っている人というのは、必ず「守るもの」を持っています
 それはお金や財産かもしれませんし、立場やプライドかもしれません。家族や恋人かもしれませんし、自分自身の場合もよくあります。ともかく、そういったものが傷つけられそうだと「アタマ」が考えたときに、傷つけてくる対象にモトが移動することによって、ココロから湧き起こってくるのが怒りの感情です。


「怒り」にも「メカニズム」がある

そう、もちろん「怒り」は感情なのです。感情である以上、必ず先程の「メカニズム」である

・カラダ(見たこと、聞いたこと)
  ↓
・アタマ(それが何かを傷つけている、傷つけそうだ)
  ↓
・ココロ(モトが急に減った、守らなければ)

というプロセスを経て、起こっているのです。

 先程の例では、恐怖を「アタマで考えること」によって和らげることができる、と書きました。今回も同じ要領で、怒りに振り回されるココロを鎮めることができる例を挙げましょう。


「怒り」にも『ABC理論』は有効だ

第一章で「ココロ」について書いたときに『街で知らない人とぶつかって怒ってしまう』例を出しましたね。覚えていますか?
 実はあのシチュエーションは、先程のABC理論の説明によく登場するんです。ですからここで、ABC理論に乗せて、もう一度振り返ってみましょう。

 『街を歩いているとき、誰か知らない人に肩がぶつかってしまった。相手は気づいているのかいないのか、こちらを振り返ることなく立ち去ってしまった。』という例でしたね。

 こんな時「なんだコンニャロウ!」と怒ってしまう人も多いと思います。怒りの度合いも様々です。ムキー! と激昂する人から、ちょっとイラッとする程度の人まで・・・。
 そして中には何とも思わない人、さらには「お、相手は無事かな?」と気遣う人までいるかもしれませんね・・・。

 と、第一章ではそんな話をしました。

 ABC理論の説明では、犬を見た人が「犬を怖がる」か「犬を可愛がるか」は「Bによりけり」だと書きましたけど、この場合もそうです。同じシチュエーションで怒りの度合いが人それぞれなのも、やっぱり

『B(信念)』が人それぞれ違う

からなんです。

 ですから、この『B(信念)』に自分で気づいて、アタマでもう一度考え直してみることで、怒りをコントロールすることができる事があります。


一歩引いて「アタマ」で状況をとらえよう

では、さっきのシチュエーションで「怒っている人」の例を、ABC理論に当てはめてみましょう。

・A「カラダ」(肩がぶつかる、少し痛む)
   ↓
・B「アタマ」(損害が与えられた、攻撃されている→相手に注目)
   ↓
・C「ココロ」(注目してモトが減ったので「怒り」発生)

 この場合の損害というのは、肩をぶつけられたこと、痛みを与えられたことを指します。アタマはこの時、この「損害」を

「相手からの攻撃」

とみなしています。

 相手から攻撃されている! という考えは、大きくモトを減らします。なぜなら、攻撃をしてくる相手には、攻撃から身を守るために、大きく注目する(=モトが流出する)からです。

 確かに、実際に「害意を持って」攻撃を加えてくる相手がいる場合、ここは相手にググッと注目して、自分の身を守る必要があります。でないと、死んでしまうかもしれませんからね。

 ですけど、このシチュエーションでは、どうでしょうか?
 街ですれ違いざまに肩をぶつけることは、よくあることです。そして、それで大けがをしたり、死んでしまうことは、ほとんどありませんよね。

 そんな状況で「損害を受けた! 攻撃されている!」とアタマが判断するのは、ちょっと行き過ぎな気がしませんか?

 痛い思いをするのはイヤなことかもしれませんし、相手が謝罪しないこともまたイヤな思いかも知れません。ですけど、相手は本当に気づいていないのかもしれないですし、ものすごく急いでいたりするのかもしれませんよね(今すぐトイレに行きたいとか・・・心当たりあるでしょ?)。
 だから、「アタマで」考えてみたら、そんなに「攻撃された!」と怒ってしまう「必要性」ってないのかもしれません


アタマの働きと『習慣』

そう、ここでもやっぱり大事なのは

アタマで考える

ことなんです。ココロが感情を出してくる前には、必ず「アタマ」が動いています。

 ところが、です。特に考えていないのに感情が出る、という場合もよくあるんじゃないでしょうか。無意識に行動してしまうクセのようなものです。実は、そんなときでもアタマは必ず動いています。

 こんなふうに「無意識」なのに「アタマが何らかの処理をする」機能のことを、僕たちは

『習慣』

と呼んでいます。過去の体験や学習によって、自動的にアタマがカラダやココロを操作することです。実は、先のプロセスの「B(信念)」を、習慣が自動的に行うこともよくあるんです。

 だから気づきにくいんですね。

 「肩をぶつけられたら、怒って当然だ」と思っている人は、Bが完全に習慣化しています。自分でも気づかないレベルで習慣になっているんです。その結果、自然と「怒り」が湧く「ように見える」んですね。

 ですがやっぱり、Bはあります。習慣という形で、アタマが勝手にAからCに送っているんです。

 この「習慣」にアタマで気づくことが第一歩です。


 習慣に気付くことができれば、アタマを使って「考えなおす」ことができるようになります。「恐怖」の克服と同じです。

 自分はどうして怒っているのか?

 何を「守ろう」としているのか?

 それが分かれば、怒りは自然と収まります。もし、あなたが「ついカッとなって暴力を振るう」クセがあるとしたら、気持ちを抑えるのではなく、アタマを上手に使って「習慣を変える」ことが、変化する方法の一つだと僕は思います。


モトの知識をその「怒り」に応用しよう

そしてもう一つ。モトです。

 怒りの感情は、好き嫌いゲージの急な低下によって起こります。これ以上モトを減らしたくない、というココロの叫びみたいなものです。
 モトが減っているので、好き嫌いゲージが減って「不安感」が高まりますし、だからモトを取り戻すために必死になって「怒ろう」とするわけです。これも「モトあつめ」の一種といえます。

 ですが・・・モトは「増やせる」んでしたね。

 街で肩をぶつけて謝らない人、その人に注目することで失ったモトも、後で十分取り戻せます。肩の痛みも(よほどひどいものでない限り)じきに治まります。

 そう思ったら、怒りでさらにモトを発散させるのは、ムダというか、もったいないような気がしませんか?

 そもそも、怒ると、モトが減ります

 怒る時って、気力みたいなものがいるって感じたこと、ありませんか? あれは実際に、モトを消耗しているんです。モトの流出を防ぎ、さらには相手から奪い返すために、相手に注目しますからね。
 ただでさえ減ってしまったモトを、怒ることによってさらに消耗するんです。怒りが怒りを呼んで、我を失うことがあるのはこういう理由です。モトがどんどん減って、怒りが増幅されていくんです。

 そういうわけで、理屈の上では「怒るほどモトが減る」んです。ただでさえ何かに怒っている=モトが減らされているのに、怒り続けるとさらにモトが減っちゃうんです。もったいないですよね・・・


減らしたモトは、後で取り戻せる!

生きていると、いろんな場面に出くわします。さっきの例みたいに、気に食わないこともよく起こります。
 それとは逆に、とても楽しくて幸せな場面もちょいちょいあります。(幸せなことなんて全くない、という人は、自分で意識して増やした方がいいかもしれません。)

 どちらの場面でも、ココロが持っているモトが増えたり減ったりしていますが、これを逆に考えると、増えたり減ったりするのは、あくまでも「モト」なんです。
 何が言いたいかというと、減るのもモト、増えるのもモトなんだから、一旦減らしたモトも、後で別の体験をすることで補える、ということなんです。

 悔しい思いをしたときに減らしたモトも、後で楽しい気持ちになった時に増えたモトも、同じモトなんです。モトに違いはありません。ただモトが増えたか、減ったかの差でしかないんです。

 だから、悲しいこと・怖いこと・怒ることがあったら、後でめいっぱい、自分を幸せにしてあげてください。あなたのココロのモトの量は、単純に差し引きです。増やせば回復します。回復すると、ココロのモトの量が増え、その分幸せを感じやすくなります。

 人生が辛いと感じているなら、特に意識して「モトを増やす」行動を取りましょう。


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 というわけで、この章では「ココロの動きとモトの増減の関係」を見てきました。特に、ネガティブな気持ちでココロのモトが減少するシチュエーションについて、詳しく見てきましたね。
 人生が辛い時というのは、こういうネガティブなココロの動きに人生全体が支配されているような、そんな考えにとらわれてしまいがちです。ですが、アタマを活用することで、ココロのモトの量を回復させ、人生をより楽しく明るいものにすることができるかも知れない、ということを紹介してきました。

 では次の章では、大抵の人の関心事である「恋愛」や「お金」の話を通してもっと具体的に、ココロのモトの量を減らし過ぎず、できれば増やしていくことで、辛い人生をより辛くないものに変えていく方法を考えていきたいと思います。

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